著者 アガサ・クリスティーは、殺人事件や名探偵だけではありません。
『春にして君を離れ』は、事件よりも人間の心を描いた作品でした。
読み終えたあと、一番考えさせられたのは登場人物ではなく、自分自身だったような気がします。
ミステリーを読むつもりだった
アガサ・クリスティー作品は何冊も読んできました。
だから今回も、自然と探偵目線で読み始めていました。
「ここが伏線かな。」
「この人が怪しい。」
「そろそろ何か起きるはず。」
そんなことを考えながらページをめくります。
ところが、思っていたような展開にはなりません。
大きな事件も起きません。
それなのに、不思議と読む手は止まりませんでした。
読んでいたのは事件ではなく、人の心だった
途中で気付きました。
この作品が描いているのは事件ではなく、人の心なのだと。
人は、自分のことを一番分かっているようで、実は見えていない部分があります。
自分では善意だと思っていたこと。
正しいと信じていたこと。
その見方が少しずつ揺らいでいく様子が、とても丁寧に描かれていました。
派手な演出はありません。
だからこそ、一つひとつの言葉が心に残ります。
『シャイニング』のような静かな怖さ
読んでいて思い出したのは、映画『シャイニング』でした。
もちろん内容は違います。
でも、何も起きていないのに落ち着かない空気があります。
静かな時間が続くほど、不安だけが大きくなっていく。
そんな独特の緊張感を、この作品からも感じました。
これはあくまで個人的な感想ですが、その静かな怖さが最後まで消えませんでした。
ミステリーの面白さは事件だけではない
ミステリーは事件を解く物語。
ずっとそう思っていました。
でも、この作品は違いました。
人の心を見つめることも、立派なミステリーになる。
アガサ・クリスティーの引き出しの多さに改めて驚かされました。
代表作を何冊も読んできましたが、この作品は違う意味で心に残る一冊でした。
まとめ
『春にして君を離れ』は、犯人探しを楽しむ作品ではありません。
人間とは何か。
自分は本当に自分を理解しているのか。
そんなことを静かに問いかけてくれる作品です。
派手な展開はありません。
それでも読み終えたあと、長く余韻が残る一冊でした。
おわりに
オイラは思いました。
本当に怖いのは、目の前にいる誰かではなく、自分では気付いていない自分自身なのかもしれません。
事件が起きなくても、人の心だけでここまで読ませる。
さすがアガサ・クリスティー。
名作と呼ばれ続ける理由を、改めて感じた読書でした。
本日の川柳
静けさが 胸に深く 刺さる本